「これ、前にも
同じ故障ありましたよね?」
——その答え、もう記録の中にあります。
故障の記録は、日本語・タイ語・英語でばらばらに書かれている。それでも、AIを使えば「前回どう直したか」をその場で引けます。ただし、道具の選び方を間違えると、タイ語の記録がほとんど出てきません。うちが実際に測って分かった、うまくいく入れ方を全部書きます。
止まったその場で、過去の記録を引く(イメージ)
この記事の要点
- 故障の記録が日本語・タイ語・英語でばらばらでも、AIで「前回どう直したか」をその場で引ける
- ただし探す道具の選び方で、タイ語の記録の見つかり方は4倍変わる(18%→72%)
- 飛びつくと事故る4つのポイントと、始める前の5つの質問を全部書いた

足りないのは、
引き出す方法だけ。
ラインが止まって、保全の人が集まる。誰かが言います。「これ、前にも同じ止まり方ありましたよね?」
みんな、なんとなく覚えている。でも、いつだったか、何を交換して直したかまでは出てこない。前回直したベテランは今日は休み。結局、一から原因を探すことになる。
その答えは、たいてい、もう記録の中にあります。日報にも、故障の記録にも、前回の直し方はちゃんと書いてある。足りないのは、それをその場で引き出す方法だけです。
AIで、
ここまで楽になる。
うちがタイの工場向けに作っている仕組みでは、こんなことができます。
止まったその場で、過去の似た故障が出てくる
症状を打ち込むと、似た記録を探して並べます。探すだけなら、試作のPCで1回0.2秒ほどです。
ベテランが休みでも、ベテランの記録から探せる
頭の中にしかなかった「前回はここだった」が、記録として引けます。
タイ語で聞けば、タイ語で返ってくる
原因の候補と、確かめる場所のチェックリストを、聞いた人の言葉で書きます。
PCの中だけで動く
故障の記録を、社外のサービスに出す必要はありません。
そしてもう一つ。記録の言葉を、日本語に統一しなくていい。これが一番大きいかもしれません。
記録の言葉は、
そろえなくていい。
タイの工場の故障記録を開くと、たとえば「音がおかしい」という同じ症状が、何通りにも書かれています。日本人の管理者は日本語で、タイ人のリーダーはタイ語で、設備メーカーの人は英語で書く。誰も間違っていません。それぞれが一番書きやすい言葉で、正しく書いています。

▲ 記録は、書く人の言葉で(イメージ)
記録の言葉は、そろえなくていい。探す側で吸収する。
▲ 書き方の例です。「意味で探す」の列は、意味の近さで探す道具の考え方を示したものです。
Excelの検索窓に「異音」と入れても、出てくるのは「異音」と書いた行だけです。だから多くの工場では「記録は日本語で」と決めたくなる。でも、慣れない言葉で書くと、どうしても記録は短くなります。
AIの「意味の近さで探す」道具を使えば、この問題はほぼ片付きます。文字ではなく意味で探すので、書き方や言葉が違っても、同じ症状の記録をまとめて拾ってくる。現場の人には、母国語で、詳しく書いてもらえばいい。
ただし、飛びつくと事故る。
うちが知っている4つ。
AIで記録を探す仕組みは、今では工場のPC1台で動かせます。手軽になった分、よく分からないまま入れると、うまくいきません。うちが実際に作って、測って、分かったポイントを4つ書きます。

探す道具を選ばずに入れると、タイ語の記録が出てこない
「意味で探す」道具には、たくさんの種類があります。そして、得意な言葉がそれぞれ違います。
うちでは、架空のゴム製品工場の故障記録を15,000件作り(日本語・タイ語・英語がまざっています)、日本語・タイ語・英語で120問ずつ、計360問の「この症状の記録を探して」を用意しました。道具を入れ替えて、探した結果の上位5件に、正解の記録が入るかを数えています。
道具の選び方で、タイ語の記録の見つかり方が4倍変わる。
▲ 全体(360問)ではA 39%・B 64%・C 76%。A=nomic-embed-text、B=BGE-M3、C=Qwen3-Embedding 4B。どれもPCの中で動く道具です。架空データでの結果なので、実際の工場の記録では数字が変わります。
道具Aのまま入れていたら、タイ語で探したときに正解が出てくるのは18%。同じ問題でも、道具Cなら72%です。道具の選び方だけで、タイ語の記録の見つかり方が4倍変わります。
「AIを入れたのに、タイ人スタッフが使ってくれない」。その原因が、スタッフではなく道具の選び方にあることもあるわけです。うちは、入れる前に自分たちの記録で測ってから道具を選んでいます。
AIに「原因は何%」を作らせると、もっともらしい数字が出てくる
AIは文章を書くのが得意です。その分、数字までそれらしく作ってしまうことがあります。うちの仕組みでは、役割をこう分けています。

「この原因の可能性が何%」という数字は、プログラムが過去の記録を数えて出します。AIには作らせません。だから、出てきた数字を安心して読めます。
出してはいけない記録を、クラウドのAIに入れてしまう
故障の記録には、設備の型番や、取引先の名前、品質のトラブルが入っていることがあります。手軽だからといってクラウドのAIに貼り付けると、社外に出してはいけない情報が出ていきます。
うちの仕組みは、インターネットにつながないPCの中だけで動きます。どのデータをどのAIに入れてよいかの線引きは、社内のどのデータを、どのAIに入れてよいかに全部書いています。
設備の呼び名がばらばらだと、「この機械の記録だけ」が見られない
症状の書き方は自由でいい。ただ、同じ機械が「2号機」「No.2」「Press-02」とばらばらだと、「この機械の過去の故障だけ見たい」ができません。
うちの試作では、設備の呼び名の一覧表(用語の辞書)を1つ作って、書き方の違いをそろえています。そろえるのは設備の呼び名だけ。現場に「書き方を統一しろ」とは言いません。
準備は、
5つの質問に答えるだけ。
まず、入れた後にもっと役に立つ記録にするコツが2つあります。
「症状」と「実際の原因」を別の欄に書く。「異音がしたのでベアリング交換」と1つの欄に書くより、症状・原因・直し方の欄を分けたほうが、探した結果が読みやすくなります。
直った後に、実際の原因を1行足す。止まった日の記録だけで終わらせず、「結局ここだった」を書いておく。次に同じ症状が出たときの、一番の手がかりになります。
そのうえで、始める前に次の5つに答えてみてください。答えによって、最初にやることが決まります。
④の確かめ方は簡単です。10件の故障それぞれを、日本語・タイ語・英語で「この症状の記録を探して」と聞き、上位5件に正しい記録が入るかを数える。うちが15,000件でやったことを、小さくやるだけです。社内で自由に使ってください。
よくある質問。
Q. 記録は紙とExcelです。それでも使えますか?
Excelなら取り込めます(列の名前や並びを合わせる作業は要ります)。紙の記録は、まず入力が必要です。全部を一度にやらず、止まると一番困る設備の分から始めるのがおすすめです。
Q. タイ人スタッフも使えますか?
使えます。タイ語で聞けばタイ語で返ってきます。ただし道具の選び方でタイ語の記録の見つかり方は大きく変わるので、そこは入れる前に確かめます。
Q. AIが出した答えを、そのまま信じていいですか?
出てくるのは「過去の似た記録」と、記録を数えた件数です。それを見て、現物を確かめて、どう直すかを決めるのは現場の人です。判断の材料がその場でそろう、と考えてください。
Q. 社外にデータを出さずにできますか?
できます。この記事で比べた3つの道具は、どれもインターネットにつながないPCの中で動きます。
道具の選び方、記録の取り込み方、数字をAIに作らせない仕組み。うちは、つまずくところを先に測って知っています。
始め方は、ローカルLLM導入支援のページにまとめています。データ診断(30,000 THB・訪問1日)では、伺ってその場で御社の記録を見て、何ができそうか・何が足りないかをレポートでお渡しします。データは持ち帰りません。一緒に始めましょう。