「前に似た部品の見積、
どこにあったっけ?」
——下調べはAIに、金額はプログラムに。
見積の仕事には、計算のほかに「探す」と「書く」がたくさん入っています。過去の似た部品を探す。所見を文章にする。そこはAIで楽になります。ただし、金額までAIに作らせると事故ります。うちが作っている見積の試作をもとに、AIに任せるところと任せないところを全部書きます。
似た部品を探して、見積の下調べをする(イメージ)
この記事の要点
- 見積でAIに任せるのは、過去の似た部品を探すことと、所見を文章にすることだけ
- 金額はプログラムが計算する。AIが書いた文章の数字は、計算結果と照合してから出す
- 見積で事故る4つのポイントと、始める前の5つの質問を全部書いた

時間がかかるのは、
探すところ。
新しい機種の見積依頼が来る。部品表を開くと、品番がある部品と、まだ品番のない新しい部品がまざっている。
品番がある部品は、過去の見積を引けば単価が分かります。困るのは、新しい部品です。「前に似た部品の見積をしたはず」。そう思っても、いつの、どの見積だったかが出てこない。過去のExcelを1つずつ開いて探すことになる。探し当てても、その数字を使った理由を、上司や本社に説明する文章も書かなければいけません。
見積の仕事を分けてみると、計算のほかに、探す仕事と書く仕事がたくさん入っています。AIに任せるのは、その探す・書くのところです。金額の計算は、今までどおり決まった式で、プログラムがやります。
AIで、
ここまで楽になる。
うちは、架空の部品データを使って、見積の下調べをする試作を作っています。部品表(Excel)を読み込むと、こんなことができます。
品番がある部品は、過去の見積から単価を引く
部品表を読み込むと、品番で過去の見積を引いて単価を入れます。ここはAIではなく、プログラムの仕事です。
新しい部品は、似た過去の部品が並ぶ
部品の名前・材質・重さ・大きさから、似た過去の部品を上位3つまで並べます。似ている理由も一緒に出します。
買う部品は、参考価格と購買への依頼リスト
新しく買う部品は、似た部品の単価の幅を参考価格として出し、「要購買確認」の印をつけます。購買に回す見積依頼のリストもExcelで作ります。
所見を、日本語・英語・タイ語で書く
原価の集計結果をもとにした所見を、AIが文章にします。文章の中の数字は、計算結果と照合してから出します。
どれも、インターネットにつながないPCの中だけで動きます。単価も部品表も、社外のサービスに出す必要はありません。
ただし、飛びつくと事故る。
うちが知っている4つ。
見積の数字は、間違えればそのまま会社の損になります。だからこそ、AIをどこまで使うかを先に決めておく必要があります。うちが試作を作って分かったポイントを4つ書きます。

AIに金額を計算させると、それらしい数字が出てくる
AIは文章を書くのが得意です。その分、数字までそれらしく作ってしまうことがあります。見積でそれが起きると、もっともらしい金額が、そのまま客先に出ていきかねません。
だから試作では、金額はすべてプログラムが計算します。材料費、加工費、スクラップを決まった式で積み上げ、画面とExcelと報告書で同じ数字になるように、丸め方も決めています。AIに渡すのは、計算が終わった結果だけです。
それでも、AIが数字を正しく写すとは限りません。そこで、AIが書いた文章をもう一度プログラムが確かめます。

文章から数字を全部抜き出し、1つずつ計算結果にあるかを照合します。ない数字があれば、AIに書き直させます(2回まで)。それでも合わなければ、数字を入れない決まった文章に切り替えます。計算結果にない数字は、外に出しません。
単価や客先の図面を、クラウドのAIに貼ってしまう
見積で扱うのは、社外に出してはいけない情報ばかりです。うちのデータの4区分でいえば、原価や単価は「機密」、客先から預かった図面や仕様書は「持出禁止」に入ります。手軽だからといってクラウドのAIに貼り付けると、それが社外に出ていきます。
試作は、インターネットにつながないPCの中だけで動きます。どのデータをどのAIに入れてよいかの線引きは、社内のどのデータを、どのAIに入れてよいかに全部書いています。
部品の呼び名がばらばらだと、似た部品が出てこない
同じ部品でも、全角と半角、カタカナの書き方、英語の綴りが、人や時期によって違います。そのまま探すと、本当は似ている部品が出てきません。
試作では、部品表を読み込むときに、全角と半角、カナの違い、綴りの違いをそろえてから探しています。画面には、そろえた後の名前で出します。
似た部品の値を、理由を見ずにそのまま使う
似た部品が見つかっても、その値をそのまま使ってよいとは限りません。材質が違ったり、重さが大きく違ったりすることがあるからです。
試作では、似た部品ごとに「材質が同じ」「重量差が大きい」といった似ている理由を出します。この理由の文は、AIではなく決まったルールで作っています。新しい部品の原価は、計算式と途中の値まで画面に出し、似た部品から借りた工程の値は、担当者が画面で直せます。買う部品の参考価格は、購買の回答が来るまで「仮」のままです。決めるのは、担当者と購買です。
準備は、
5つの質問に答えるだけ。
始める前に、次の5つに答えてみてください。答えによって、最初にやることが決まります。
④は、入れる前の一番の確かめ方です。似た部品がちゃんと出てくるか、計算した原価が実際の見積とどれだけ違うかを、自分たちの記録で見ておけば、「思っていたのと違う」に入れる前に気づけます。
よくある質問。
Q. 見積の様式や原価の計算式は、会社ごとに違います。
合わせます。うちの試作の計算式は、説明のための簡単な式です。実際に使うときは、御社の様式と計算式に合わせて作ります。
Q. 図面から寸法や材質を読み取れますか?
今の試作は、部品表(Excel)から始めます。図面を読み取る部分は入っていません。
Q. AIが作った見積を、そのまま客先に出していいですか?
AIが作るのは、金額ではなく、似た部品の候補と所見の文章です。金額はプログラムが計算し、出すかどうかは担当者が決めます。
Q. 社外にデータを出さずにできますか?
できます。うちの試作は、インターネットにつながないPCの中だけで動きます。
金額をAIに作らせない仕組み、書いた数字の照合、似ている理由の見せ方。うちは、見積でつまずくところを先に知っています。
データ診断(30,000 THB・訪問1日)では、伺ってその場で御社の見積や原価の記録を見て、何ができそうか・何が足りないかをレポートでお渡しします。データは持ち帰りません。見積のほかにもAIでやりたいことがあれば、勉強会とワークショップのセットで、どこから始めるかを一緒に決められます。全体像はタイの工場で、AIはどこから使う?にまとめています。一緒に始めましょう。


